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写真よもやま話


写真やカメラに関するよもやま話を語ります。

写真の値段

 京都の平安神宮の近くに写真専門のギャラリーがあります。そこのショーウィンドウに販売用の作品が飾られているのですが、 私が覗いていると、観光客らしい老夫婦が通り掛かりました。男性の方がショーウィンドウを覗き、波を撮影した作品を見ながら、 「3万円。この波が3万円かぁ。うーん、要らん(要らない)なあ。」と呟き去って行きました。隣で見ていた私は思わず噴き出してしまいました。

 しかし考えてみると写真の値段というものは、興味の無い人からすればそんなに高いとは夢にも思わないでしょう。 街の写真屋さんで六つ切や四つ切に大きく伸ばしてもせいぜい2~3千円ぐらいでしょうから。 でもギャラリーに飾られている写真は1枚数万円~数10万円。銀座の高級ギャラリーには数百万円もするものが飾られていることがあります。 そもそも写真の値段っていったいどうやって決まるのでしょうか。

 私が写真を初めて購入したのは、2011年の6月でした。前年通った写真のワークショップの師匠(皆は「先生」と呼ばず、親しみを込めてこう呼びます)である渡部わたなべさとるさんの個展が東京の中野にある冬青社とうせいしゃのギャラリーでありました。 ギャラリーを訪れ作品を見ていると、ふと目に留まった作品がありました。 私が立ち止まって見ていると、ギャラリーの受付のMさんが近くに来て、「これは人気があって、最初に来られた渡部さんのコレクターの方も1枚購入されていました」と言ったのです。 やっぱり良いと感じたのは私だけじゃないんだなと思いながら、「幾らぐらいするのですか」と聞くと、価格表を持って説明をしてくれました。
 Mさんの話では、作品一つ一つに番号(エディションナンバーといいます)が振られていて、1作品につき最大15枚しか販売しないこと、 販売枚数が増えるにつれて値段が上がっていく仕組みであること、その作品はすでに2枚売れていて、次の3枚目までは同じ値段になるが、4枚目からは少し値段が上がるとのことでした。
 プリント代、フレーム代、マット代、送料で合わせて5万円を少し超える値段でした。 迷いましたが、たまたまボーナス月でもあったので、思い切って購入しました。 私はこの時初めて写真の値段の仕組みを知りました。

私が初めて購入した渡部さとるさんの写真

 このように写真はエディションナンバー毎に値段が付けられているのが一般的です。 最初の値段は作家にもよりますが、日本人の場合は18×11インチのサイズで新人作家で2~3万円ぐらいが相場です。少し知名度のある作家で4~7万円、有名な作家であれば8~15万円ぐらいが相場のようです。 これは日本国内での目安ですが、世界的に有名な作家になりますと、この枠を超えてしまいます。 杉本博司すぎもとひろしさんクラスになると、同じサイズでも国際相場では3万5千ドル(1ドル118円として413万円)もします。
 エディション数や値段付けは作家に委ねられますが、契約するギャラリーと相談して決めることが多いようです。その作家の実績、知名度、作品の内容、プリントサイズなどによって値段が決まってきます。プリントサイズは原則小さいのは安く、大きいほど高くなります。
 ところがこうしたギャラリー以外で値段が付く場合があります。それがサザビーズやクリスティーズなどのオークションです。オークションでは、その作品を欲しい人が入札して値段が決まって行きますので、欲しい人が多い場合はどんどん値段が高くなっていきます。 先ほどの杉本博司さんの場合、海外のオークションで1点が数千万円で取引されたことがあります。オークションでの実績は、その後のギャラリーでの販売価格にも影響してくるようです。

 こうしてみると、写真の値段はいろいろな要素が絡んでくるので、やっぱり分かりづらいなと思います。 結局は自分が欲しいと思っている作家の作品を扱っているギャラリーに直接聞いてみるのが一番早いでしょう。 よほど不親切なギャラリーでない限り、値段だけでなく、その作家についての詳しい情報をいろいろと教えてくれます。ギャラリーの場合は他の作品も扱っているので、値段やおおよその相場も分かります。
 私も敷居が高いと思いつつ、銀座のギャラリーに行って野口里佳のぐちりかさんの作品を見せてもらったことがあります。 おいそれと買える値段ではなかったので、購入こそしませんでしたが、野口さんの作品と、思いもしなかった杉本博司さんの作品まで見せて頂き、制作上のエピソードも教えて頂くことが出来ました。
作品を買わなくても話を聞いてみるだけで結構楽しめますよ。


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