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2014年 京都 紅葉巡り


 毎年、11月に京都に行くのが我が家の年中行事になっています。そして最初に行くのが修学院離宮しゅうがくいんりきゅうです。 修学院離宮は明暦元年から2年(西暦1655年~1656年)にかけて後水尾上皇ごみずのおじょうこうによって造営工事が起こされ、万治まんじ2年(西暦1659年)頃に完成した山荘です。 上離宮かみりきゅう中離宮なかりきゅう下離宮しもりきゅうの3つの離宮とそれを繋ぐ松並木からなり、総面積は東京ドーム約12個分程になります。
現在は宮内庁が管理しており、拝観には事前申し込みが必要になるため、気軽に行くというわけにはいきません。 しかし、一度その美しさを目にするとまた行きたくなる魅力のあるところです。

 今年の撮影では初めてデジタル一眼レフカメラを使いました。これまではフィルムの一眼レフカメラを使っていたのですが、 離宮内は葉が生い茂っていて暗いところが多く、フィルムでの撮影が難しかったのです。 高感度に強いデジタルカメラであればこれまで以上の写真が撮れると張り切っていました。
 ところが現地に来てから、PLフィルターを忘れてきたことに気付きました。実はPLフィルターは風景撮影には欠かせないフィルターなのです。 通常、木の葉に太陽光が直接当たっている状態では、木の葉に光が反射して、色が白っぽく見えます。 そのためコントラストが下がり、木の葉本来の色を撮ることが出来ません。しかしPLフィルターを使うとこの反射光をカットしてくれるので、木の葉本来の色で撮ることが出来るのです。
PLフィルターの効果を説明した図
プロが撮った風景写真の色が違うのは、撮影時期やプリント方法の違いもありますが、撮影時にPLフィルターを使っていることによる違いも大きいのです。
 そうした事情もあり、今年は急遽、「PLフィルター無しで美しく紅葉を撮る」をテーマに撮影することにしました。(笑)


日陰に生えた紅葉の写真

(左の写真)
 まずは日陰にある紅葉を撮りました。なぜ日陰かというと、直射日光が葉に直接当たっていなければ反射光が強くありません。 従ってPLフィルターが無くてもほぼ本来の葉の色を撮ることが出来るのです。
葉の形や葉脈まで見えるぐらいに近づいて、背景がすっきりしたところを狙って撮影しました。

古い家屋を背景に輝く紅葉を撮った写真

(右の写真)
 次に日光が葉に当たって逆光気味に透けて見えるところを撮りました。PLフィルターは順光には有効ですが、逆光の場合は効果がありません。 つまり逆光であればPLフィルターが無くても影響がないのです。 葉に光が当たって透けて見えるところを撮るというのは紅葉の撮影テクニックの1つでもありますので、覚えておくと結構役に立ちます。
 この写真のもう一つのポイントは、バックの建物が黒っぽく、ちょうど光が当たった葉と明暗差が大きいことです。 背景が黒っぽいので、紅葉の部分がより鮮やかに見えます。

青空を覆う真っ赤な紅葉の写真

(左の写真)
 今度は晴天を大きく覆う葉の下側から撮影しました。これも先ほどと同じ逆光の応用です。 この場合、難しいのは葉の生い茂った下側から撮るので、暗くてシャッター速度が遅くなり、手持ちだとブレやすくなることです。  今回は天気に恵まれたのと、撮影に使ったカメラが高感度に強いデジタルカメラであることが大きいのです。
こういう写真の場合は空が晴れて青空であることが前提条件になります。青い空であれば赤い葉がくっきり写るのですが、曇り空だとこうはいきません。 それと赤い葉は重なると黒く見えるので、あまり重なり過ぎないところを狙うのもポイントです。

林の中で上から垂れ下った紅葉の写真

(右の写真)
 右の写真は風景の一部を切り取るテクニックを応用しています。見事な紅葉の木を目の前にすると全体を撮ってしまいがちですが、写真にした時にポイントが分かりづらい写真になってしまいます。 この木は写真で写っているより大きな木ですが、その中でも特に光の当たり方で一番綺麗に見える部分のみを切り取りました。
それと、この木は幹がうねり上がるように生えていて力強さを感じたので、幹を画面右端に入れることで紅葉の美しさに木の強さを合わせて表現してみました。

大きく葉を拡げて生える紅葉の写真

(左の写真)
 左の写真も大きな木の一部を切り取っています。一部を切り取ることで紅葉の葉を大きく見せると同時に見る人にはフレームの外側に拡がりを意識させる効果があります。
風景写真では撮影者がどの部分を見せたいのかはっきり意識して撮影することが大切です。

太くて力強く生える黄色い紅葉の大木の写真

(右の写真)
 今度の写真も日陰で撮っています。明るく見えますが、フィルムカメラだとかなり厳しい場面です。 この写真では中央を斜めに横切る木と、右の2本の木が目立ちますので、この木がバランス良く配置される位置を探しました。
適度に木漏れ日が入って美しい紅葉写真が撮れました。

赤い山門を背景にした楓の写真

(左の写真)
 今度は場所が変わって真正極楽寺しんしょうごくらくじです。通称、真如堂しんにょどうと呼ばれています。 ここは街中のお寺で、あまり期待していなかったのですが、来てみるとここも見事な紅葉でした。
ただ、中には写真のように紅葉していない葉もあります。ここでは山門の赤をバックに撮ってみたところ良い感じになりました。

境内に大きく生える紅葉の写真

(右の写真)
 右の写真は境内の紅葉を撮ったものです。画面左の建物は入れなくても良いのですが、青空だけですと単調な写真になってしまうので、青空をカットしてそこに建物を入れることで単調さを避けています。
もうひとつ付け加えると建物が入っていないと山中の紅葉と区別がつきません。建物を入れることで、寺院の紅葉であることを表現しています。

赤い紅葉の木々に覆われた中から撮った三重の塔の写真

(左の写真)
 左の写真は紅葉の木々の間に三重の塔が見える、いわゆるトンネル構図というものです。この写真も日光の当たる葉の下側から取っているのでPLフィルタが無いことはあまり影響しません。
また、こうした三重の塔と紅葉を合わせると絵になりやすいのですが、あくまでも紅葉が主役であるため建物全体を入れる必要はありません。

寺の建物を背景に光が当たって輝く紅葉の写真

(右の写真)
 右の写真は背景に黒っぽい建物を入れて、紅葉を際立たせるテクニックを使っています。 日陰になっている葉と日の当たっている葉が混ざった部分を狙って撮りました。

寺の石畳の近くに生える赤い紅葉の写真

(左の写真)
 この写真もこれまでと同じテクニックを使っています。バックに黒っぽい背景を入れて、紅葉は少し日が当たった部分を入れてコントラストを出しています。

暗い林の中で光が差し込んで輝く紅葉の写真

(右の写真)
 真正極楽寺から歩いて金戒光明寺きんかいこうみょうじに向かいます。 その途中で葉が生い茂って暗くなっている林に光が差し込んで輝いている枝葉を見つけました。
この写真もこれまでのテクニックを使っていますが、もう一つのポイントは光が当たっている枝葉が小さいので、出来るだけ近づいて大きく撮ることで主役を強調しました。

美しい山門と赤い紅葉の写真

(左の写真)
 最後は金戒光明寺の山門に紅葉を入れて撮りました。この山門は最近修理をされたようで、大変綺麗になっています。 山門の黒い木、木に塗られた白い塗料、カラフルな布飾り、そして紅葉の赤を入れることでカラフルな感じの作品になりました。
ポイントは山門全体を撮らないことと、木組みのラインを傾けないこと、そして色のバランスが良く、山門の木組みが綺麗なところに絞って撮影することです。 この写真は今回一番のお気に入りです。

(最後に)
 PLフィルターが無いことで大きな風景は撮れませんでしたが、なんとか今年のすばらしい紅葉を写真に残すことが出来ました。
最後に紅葉撮影のポイントをまとめました。

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