今年の7月のことですが、神戸市長田区にある旧二葉小学校に行ってきました。
私はまったく知らなかったのですが、地元では結構有名な学校で、廃校になった校舎が昔のまま残っているという話を聞いて俄然撮影に行ってみたくなったのです。
学校としては廃校になりましたが、建物自体は神戸市の「地域人材支援センター」として今も利用されています。
暗い校舎内を撮影するので、いつものコンデジではなく高感度のEOS-6Dで撮ることにしました。
(左の写真)
この日はあいにくの小雨模様でした。まずは校舎の正面で1枚撮ります。
全体を撮りたかったので低い位置から広角を使いましたが、広角特有のパースが出てしまいました。もう少し下がってやや望遠寄りで撮った方が良かったと思います。
(右の写真)
建物に近づいてみます。窓の周りの壁が丸く縁取られた形がヨーロッパ風の建築物のようです。校舎としては無くても良いのでしょうが、これが無いと校舎の壁がのっぺりしてしまい雰囲気が全く変わってしまいます。
今時、こんなところのデザインに凝った建物は見あたりません。
(左の写真)
正面玄関の縁に細かい模様が刻まれています。これも最近では見ることの無いものです。
この日は晴天ではなかったので反射光が少なく、模様をくっきり写すことが出来ました。写真撮影は天気が良過ぎるのもかえって良くない場合があるのです。
(右の写真)
玄関に入ってすぐ隣に少し広い部屋があり、壁際に子供用の可愛らしい椅子が並んでいました。あまりの小ささに驚かされます。
カメラの自動露出では少し明るく写るので、少しマイナスに補正します。この椅子の小ささをもう少し上手く表現したかったのですが、まだまだ腕が足りません。
(左の写真)
1階の廊下の突き当たりに扉があり、その上に格子のついた明かり窓がありました。丸い照明と格子の四角がよくマッチしています。
ランプの白と格子のこげ茶がちょうどよい感じになるように露出を調整して撮りました。
拡大してみると分かりますが、白い壁にトーンが出ていて雰囲気が出ています。個人的にはこの写真が一番気に入っています。
(右の写真)
2階に上がってみました。長い廊下には丸いランプが天上からいくつも吊るされていました。ヨーロッパの建築物を彷彿させるような幻想的な雰囲気です。
床は木の板が張られたものでした。歩いてみると時々「キュッ」という音がします。コンクリートの床と違い、木の温かみが感じられます。
(左の写真)
廊下の途中に机が丸く並べられている部屋がありました。机は一つ一つ台形に切られているので、机同士を隙間なく合わせるときれいな丸になって並びます。
ここで子供達は顔を合わせて絵を描いたり工作を作っていたのでしょう。楽しい空間を作ってくれる素敵な机です。
写真としては特に凝ったものではないのですが、撮影には結構苦労しました。光の当たっている部分とそうでない部分で明暗差が激しく、非常に撮影しづらいのです。
露出を調整しながら撮った数枚の中で一番マシな作品を掲載しました。
(右の写真)
机をよく見てみると、天板はよくある1枚板ではなく小さな板を2枚並べたものです。今なら無理をしてでも1枚板にしてしまいそうですが、1枚板だと値段が高くなってしまうのでこのようになったのでしょう。
拡大してみると良くわかりますが、板には傷があったり、絵の具がついていたり、落書きがあったりします。ところどころにキリか何かで掘られた穴もあります。こうしたキズや汚れも歴史を感じさせるアクセントになっています。
(左の写真)
2階に上がってみました。教室の窓ガラスは擦りガラスになっていますが、ただの擦りガラスではありません。不規則で細かい模様が入っていて、光が当たると赤、緑、黄、青、燈などいろいろな色で光ります。
夕方で撮影にはやや暗かったのですが、カメラの高感度を頼りに撮影してみました。うっすらとですが、光が当たったところがキラキラ輝いてとても綺麗です。
(右の写真)
廊下の突き当たりは外からの光が差し込んでいて黒いシルエットになっていました。差し込んでくる光が廊下に当たって綺麗なので、低い位置から撮影します。光が床板に反射して雰囲気のある写真が撮れました。
(左の写真)
教室の入り口にある大きな木の扉を撮ります。廊下が薄暗い上、扉がこげ茶色なのでカメラの露出をオートで撮ると写りが明るくなり過ぎるので、ここでもマイナス補正をしています。
薄暗い雰囲気と木の扉の重さを感じられるよう、露出を変えて数枚撮ってみました。
(右の写真)
ありがちな写真ですが、教室の入口に掛かっているクラスの番号札を撮ります。今はすべてプラスチック製になっていますが、ここではさすがに木製です。ただ、この札自体は新しいもののようです。
(左の写真)
窓から教室の中を覗いてみます。黒板は残念ながら昔の木製のものではなくアルミの枠が付いた新しいものが入っています。地域人材支援センターとして利用されているのでやむを得ません。
ただ、教壇は昔ながらの木製の物が置いてありました。
(右の写真)
3階に上がってみます。階段はすべて木製です。よくある金属製の滑り止めもついていません。歩くと小さくミシミシと音がします。
子供が登りやすいように段差が低く抑えられているため、段数がやや多くなっています。大人だと1段飛ばしに登ってちょうど良い感じです。
(右の写真)
階段をよく見ると木目が綺麗に光って見えます。角が長い間に擦り減って丸くなっていますが、おかげで転んで怪我をすることは少なそうです。
効率だけで考えるとコンクリートですが、木というのは温かみを感じるだけではなく、柔らかさがあるので子供にとって安全です。
(左の写真)
階段の手摺りに飾りのようなものが付いています。金属製の飾りは潰れてしまっていますが、ちょっとしたアクセントになっていたのでしょう。
手摺りの機能としては必要のないものですが、デザインとしてのこだわりを感じます。
(右の写真)
階段を上ったところは踊り場のようになっています。休み時間にここに集まって話をする子供達が居たことでしょう。
そういえば私も小学校や中学校の頃はこのような場所で友達と話をしていたことを思い出しました。
(右の写真)
3階の廊下の突き当たりは講堂になっていました。舞台がありますので、ここで集会や学芸会などをやっていたのでしょう。床はつるつるに磨かれています。
最近は体育館が講堂兼用になっている学校が多いですが、この学校は講堂が初めから建物の中にあったというところにモダンな感じを受けます。
(最後に)
旧二葉小学校は堅牢な洋風モルタル建の外見と、木で作られた内部の調和が素晴らしい建物でした。
建物自体は阪神大震災にも耐えた丈夫さを持ちながら、内部は木で作られたことによる暖かさと転んでも怪我をしにくい人にやさしい作りをしており、設計が素晴らしいというほかありません。
設計者は分かりませんが、相当な技量を持った人だったと思います。歴史遺産として永く残して欲しいものです。